ビジネス・ブランド戦略と商標権

商標と商号

1.「商標」について

  • 「商標」の定義

    [商標法第2条第1項]

    「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。

    一.業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの

    二.業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

「商標」とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・役務(サービス)を他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。

「商標」は、他人の登録商標と同一又は類似でなく、同一又は類似の指定商品・役務に使用するものでなく、その他所定の登録要件を満たすことで特許庁に登録することができます(商標法第16条)。

「商標登録」が認められると、「商標権」が発生し、「商標権」を有する商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標を独占的に使用することができます(商標法第25条)。また、商標権者は、たとえば、他人が自社商品の登録商標と類似する商標をその商品に使用することを排除することもできます(商標法第37条1号)。

  • 「商標」の具体例

    (1)文字商標

    商標「XYZ」 指定商品「菓子」

    (2)図形商標

    商標「 image001.png  指定役務「飲食物の提供」

この他、「立体商標」、「記号商標」等があります。

また、次回の商標法改正により、「音の商標」、「色彩の商標」、「位置の商標」等の導入が予定されております。

2.「商号」について

  • 「商号」の定義

    [商業登記法第1条の2第4号]

    商号 商法第十一条第一項又は会社法第六条第一項に規定する商号をいう。


[商法第11条第1項]

商人(会社及び外国会社を除く。以下この編において同じ。)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。

[会社法第6条第1項]

  1. 会社は、その名称を商号とする。
  2. 会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。
  3. 会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

「商号」とは、商人が営業上、自己を表示するために用いる名称です。

たとえば、「XYZ株式会社」といった名称です。

「商号」を登記するためには、他人の既に登記した商号と同一でなく、かつ、その営業所(会社にあっては、本店)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一でない必要があります(商業登記法第27条)。商号は、法務局に登記することができます。

⇒「商標」は、類似する商標があると登録が認められないのに対し、「商号」は、類似する商号があっても登記が認められる点で異なります。 

3.「商号」を「商標登録」するメリット

「商号」について登記しているだけで、その「商号」を「商標登録」していないと、以下のようなトラブルが生じる可能性があります。

(トラブル1)

「ABC株式会社」は菓子メーカーであり、キャンディーの名称を「ABC」として販売している(商号「ABC株式会社」は登記済み)。

X社は、商標「ABC」を商品「キャンディー」について商標登録している。

⇒この場合、「ABC株式会社」は、X社の商標権を形式的に侵害することになります。

商号「ABC株式会社」を登記しているということだけでは、X社の商標権を侵害しないと主張する根拠にはなりません。

(トラブル2)

「XYZ株式会社」は菓子メーカーである(商号「XYZ株式会社」は登記済み)。

A社は、商標「XYZ」を商品「キャンディー」について使用している(商標「XYZ」について商標登録していない)。

⇒この場合、「XYZ株式会社」は、その商号「XYZ株式会社」を登記しているということだけでは、A社の使用を排除することはできません。

以上より、無用なトラブルを避け、自己の業務を円滑に、安心、安全に行うため、「商号」を「商標登録」することは重要であると考えます。

以上

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